4人家族が出す生活排水量は、1日で500mlのペットボトル約2,000本にもなりますが、生活排水は流してしまえば目の前から消えてしまうこともあって、排水処理、汚泥処理などの問題に対する人々の意識は決して高くありません。
流した水は下水処理場に送られ、浄化処理を行い「水」と「汚泥」に分離されます。
浄化された「水」は再利用できますが、「汚泥」が地球環境破壊の一因となっていることはほとんど知られていないため、汚泥処理は重要です。
本記事では、汚泥処理の方法を中心に解説します。また、記事を読むと、汚泥脱水機・汚泥濃縮機のできることが分かるようになります。
目次
汚泥とは何か
汚れた水をきれいにするとは、汚水に含まれる水(H₂O)以外の不純物を取り除くということです。水に溶け込んでいる汚れを除去する方法として、広く生物処理(バイオ処理)法が用いられています。
生物処理は、微生物の酵素による反応を利用して水の汚れを分離する方法で、簡単にいえば水中の汚れが微生物のエサとなり、これを微生物が食べることで水と不純物を分離します。
この生物処理で分離された水(H₂O)以外の部分が「汚泥」であり、この場合の汚泥は微生物やその死骸、代謝物などです。水をきれいにするためには微生物の働きが欠かせませんが、その副産物として水をきれいにすればするほど大量の汚泥が発生するのです。
汚泥は産業廃棄物として処理されるもので、法律で適切に処理するよう定められています。日本での汚泥の排出量は年間約1億5,566万トン(2022年度実績)にもなり、産業廃棄物の42%を占めています。
参考:環境省「産業廃棄物排出・処理状況調査報告書令和4年度速報値(概要版)」
汚泥の種類
汚泥の種類は、有機汚泥と無機汚泥に分けられます。以下では、2種類の汚泥とともに一般廃棄物と産業廃棄物の汚泥との違いについても紹介します。
①有機汚泥
有機汚泥とは、生活排水や食品工場の排水処理過程で発生する、有機物を多く含む汚泥のことです。
有機汚泥には、食べ物の残渣や動物の排泄物などが含まれています。微生物が有機物をエサとして分解する際に生成され、処理過程で微生物が増殖します。有機汚泥自体が、新たな汚泥となる場合があるのです。
有機汚泥は「余剰汚泥」とも呼ばれ、微生物が凝集した固形物を指します。適切な量であれば、水質浄化に役立つ存在です。
一方で、過剰になると処理施設に負担をかけるため、適切な管理と処理が求められます。
有機汚泥の処理は、環境保全の観点からも重要です。放置すれば悪臭や水質汚染を引き起こし、生態系への影響が懸念されます。
②無機汚泥
無機汚泥とは、金属や鉱物などの無機物を多く含む汚泥です。
化学工場、メッキや表面処理の工場、発電所、浄水場などで発生する汚泥や、建設工事で掘削された際に発生する泥水や泥土が該当します。建設現場で発生する無機汚泥は「建設汚泥」とも呼ばれることもあります。
無機汚泥の特徴として、重金属や各種化学物質などの有害物質を含むケースが多い点が挙げられます。
不適切な管理や不法投棄によって、周辺環境に深刻な影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
無機汚泥の適切な処理は、環境保全だけでなく資源の有効活用にもつながる重要な取り組みといえます。
③一般廃棄物と産業廃棄物の汚泥との違い
汚泥は、その発生源や性質によって「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分類されます。
産業廃棄物に該当する汚泥は、特定の業種や事業活動から排出されるものです。工場や建設現場から発生する汚泥は、産業廃棄物です。
汚水槽や合併槽などの清掃で発生する、し尿が混ざった汚泥は一般廃棄物です。一般廃棄物に分類された汚泥は、自治体がその処理を担います。
一方で、汚泥の中には「特別管理一般廃棄物」として扱われるものもあります。廃棄物焼却炉から発生し、ダイオキシン類を多く含む汚泥は「特別管理一般廃棄物」で毒性が強いのです。
同じ汚泥でも成分や発生源によって取り扱いが異なるため、適切な分類と処理が必要です。
汚泥の具体例:汚泥処理を行うために
ここでは次の5つの汚泥の具体例を紹介します。
- ①下水処理汚泥
- ②産業排水処理汚泥
- ③豚舎糞尿汚泥
- ④食品加工排水処理汚泥
- ⑤浄化槽汚泥
①下水処理汚泥
下水処理汚泥とは、都市部や地域の下水処理施設で発生する汚泥を指します。
下水処理汚泥は生活排水や雨水、産業排水などが主な発生源で、高い有機物含量と栄養価を持つことが特徴です。 また、下水処理汚泥は再利用する取り組みが進み、路盤材などとして利用したり、農業の土壌改良のため、堆肥原料としても使われます。
②産業排水処理汚泥
産業排水処理汚泥とは、工場や産業施設から排出される排水に含まれる固形物のことです。
産業排水処理汚泥には、重金属や化学物質などの有害成分が含まれる場合が多く、適切に処理しないと環境汚染を引き起こす可能性があります。そのため、法的規制に基づいた厳格な処理が求められています。
③豚舎糞尿汚泥
畜産業における汚泥処理のうち、豚舎糞尿汚泥に焦点を当てて説明します。
豚舎糞尿汚泥は、畜産業において環境面での課題の一つとなっています。豚舎糞尿汚泥は、豚の飼育過程で発生する糞尿を処理する際に生成される廃棄物です。主な特徴として、以下の2点が挙げられます。
【1. 高い有機物含有量】
豚舎糞尿汚泥には、窒素やリンなど有機物が豊富に含まれています。適切な処理をすれば、有機肥料として農業利用が可能です。
【2. 環境リスク要因】
悪臭の発生や病原性微生物の繁殖リスクがあります。地下水汚染や土壌汚染を引き起こす可能性もあるため、適切な処理が不可欠です。
④食品加工排水処理汚泥
食品加工排水処理汚泥は、食品加工施設から排出される排水処理の過程で発生する汚泥です。 食品加工排水処理汚泥は、生物分解性が高い有機物を多く含んでおり、堆肥や有機肥料として再利用されることが一般的ですが、高い衛生管理が求められます。
⑤浄化槽汚泥
浄化槽汚泥は、家庭や小規模施設で使用される浄化槽から発生する汚泥です。
この汚泥には多くの細菌や有機物が含まれています。適切に処理しないと、悪臭や環境汚染の原因となる可能性があるので、法的規制に基づいた処理が必要です。
汚泥処理の方法
汚泥処理には、汚泥の性質や目的に応じたさまざまな方法があります。代表的な処理方法は以下の9種類です。
- ①焼却
- ②埋立
- ③濃縮・脱水
- ④セメント原料化
- ⑤堆肥化
- ⑥メタン発酵
- ⑦造粒固化
- ⑧溶融
- ⑨油水分離
それぞれの処理方法についての特徴などを、以下で詳しく紹介します。
①焼却
汚泥の焼却は、高温で燃焼させることで有機物を減量化して、臭気や微生物を除去する方法です。
焼却処理によって発生した熱エネルギーは、発電や暖房などに利用されることもあります。
一方で、高温となる焼却には高いコストがかかる上に、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出するため環境への負荷が不安材料となります。 焼却の種類としては以下の2つが代表的です。
- 流動床焼却:汚泥を流動化した砂の中で燃焼させる方式で、安定した燃焼が可能
- 回転炉焼却:回転する炉内で汚泥を燃焼させ、効率的に処理
焼却の方法は、汚泥の性質や処理目的に応じて選択されます。
②埋立
埋立は、安定化した汚泥を専用の埋立地に処分する汚泥処理の方法です。
埋立による処理方法では、汚泥に含まれる塩類や重金属が環境に悪影響を与えないよう、事前に適切な処理が必要です。
また、埋立地の管理も一定期間にわたって必要になります。
埋立用のスペースは限られているため、埋立処分は長期的な選択肢としては不利となることも多いでしょう。
埋立スペースが残り少なくなれば、埋立量を減らす努力やほかの処理方法との併用が求められます。
③濃縮・脱水

汚泥処理における濃縮・脱水は、汚泥中の水分を減らし、汚泥のかさを大幅に削減する方法です。
このプロセスにより、焼却や埋立などの後続処理のコストと環境負荷を軽減できます。
濃縮機ではかさを減少させた汚泥を液状のまま効率的に濃縮し、脱水機では固液分離してケーキ状の汚泥を生成します。
ケーキ状の形状だと、運搬や処分が容易になるからです。
濃縮・脱水で分離された水は廃水処理工程に戻され、処理された後に河川などへ放流されます。自然のサイクルへと還元され、環境保全にも寄与します。
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④セメント原料化
セメント原料化は汚泥を乾燥・焼成し、セメント製造の原料として再利用する汚泥処理方法です。
セメント原料化では、汚泥中の有害物質を無毒化しつつ、資源として有効活用することが可能です。
汚泥に含まれる成分がセメント製造に適している場合に、セメント原料化が選ばれます。
ただし、セメント原料化の処理方法を適用するには、汚泥が一定の基準を満たす必要があります。 基準を超える重金属や不純物が含まれている場合には、事前処理が必要です。
⑤堆肥化
堆肥化は、有機物を含む汚泥を微生物の働きで分解し、農業用の肥料として再利用する汚泥処理方法です。
堆肥化では、汚泥中の有機物が発酵・熟成され、栄養価の高い堆肥が生成されます。
一方で、大量の汚泥を処理するためには広いスペースと一定の時間が必要です。
堆肥化は環境負荷を軽減しながら、農業資源として有効活用できる点が特徴です。
⑥メタン発酵
メタン発酵は、汚泥中の有機物を嫌気性微生物が分解し、メタンガスを生成する汚泥処理の手法です。
メタン発酵で生成されたメタンガスは、エネルギー源として利用できる点が特徴です。このプロセスでは、汚泥量の削減とエネルギー回収が同時に可能となります。
一方で、メタン発酵には専門的な設備や管理技術が求められます。 メタン発酵の主なメリットは下記の2点です。
- エネルギー回収が可能
- 有機物の嫌気性微生物による減量が可能
⑦造粒固化
造粒固化は、汚泥を固形化し取り扱いやすくする汚泥処理の方法の一つです。
造粒固化によって汚泥の輸送や保管が容易となり、再利用や処分が効率的に行えるようになります。
さらに、造粒固化された汚泥は道路建設やほかの建材として活用されることもあり、資源の有効利用につながります。
造粒固化のメリットは下記の2点です。
- 汚泥の輸送と保管が簡便化
- 道路建設・ほかの建材としての再利用が可能
⑧溶融
溶融は、汚泥を高温で溶融して、無機物をスラグ化する汚泥処理方法です。
このスラグは、建材として再利用されることがあり、資源の有効活用につながりますが、
溶融には高いエネルギー消費が伴うため、設備導入の初期費用は高額になる傾向があります。
⑨油水分離
油水分離とは、汚泥中に含まれる油分と水分を分離する方法のことです。
油水分離の工程では、まず汚泥を処理して油分と水分を分離し、それぞれ再利用可能な形に変えていきます。
油分はリサイクルされ、燃料として活用されることもあります。
一方で、水分はさらに処理した上で排出されたり、別の用途に利用されたりします。
油水分離は、高度な技術や専門的知識を要するものの、資源を有効活用できる点で有益です。
汚泥処理方法のメリット・デメリット
上述した9種類の汚泥処理方法について、メリットとデメリットを一覧表にしましたので、参考にしてください。
処理方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
焼却 | 減量化、臭気除去 | コストが高い、二酸化炭素の排出 |
埋立 | 簡便 | 管理が必要、環境に負荷がかかる |
濃縮・脱水 | 減量化、扱いやすい | – |
セメント原料化 | 資源の有効利用が可能 | 基準を満たす必要あり |
堆肥化 | 農業利用が可能 | 時間がかかる、空間が必要 |
メタン発酵 | エネルギー回収が可能 | 管理が必要、設備費用がかかる |
造粒固化 | 扱いやすい | 設備にコストがかかる |
溶融 | 建材として利用が可能 | 高エネルギー消費 |
油水分離 | 資源の再利用が可能 | 高度な技術が必要 |
汚泥濃縮機・汚泥脱水機ができること
生物処理で発生する余剰汚泥は通常99%以上が水のため、そのまま焼却や埋立処分を行うと多額の費用がかかります。この汚泥をできるだけ濃縮・脱水し、汚泥のかさを減らすことで処分費や環境負荷を削減するのが、汚泥濃縮機や汚泥脱水機の大きな役割です。
汚泥脱水機は、汚泥を固液分離することでかさを減らすだけではなく、脱水後の汚泥形状がケーキ状になるため、その後の運搬取り扱いや処分を容易にすることができます。
汚泥濃縮機も基本的な役割は同じですが、かさを減らした後の汚泥形状は液状なので、液状のほうが処理後の取り扱いが容易になる場合には有効です。
汚泥の濃縮や脱水によって分離された水は廃水処理工程に戻され、処理された後に河川などに放流されるので、自然のサイクルに戻すことができます。
一方、汚泥は最終的に埋立処分や焼却処分される場合が多く、汚泥濃縮機や汚泥脱水機でいかに適切に汚泥を減容できるかが、環境保護の観点から、また持続可能な社会の実現のためにも非常に重要です。
一般的に余剰汚泥の減容率は汚泥濃縮機で約88%以上、汚泥脱水機で約95%以上です。
汚泥脱水機ヴァルート™の特長
汚泥は廃水処理を行うすべての場所から発生する産業廃棄物です。そのため汚泥脱水機は、公共下水処理場はもとより、各国の法令で定められた一定量以上の廃水を排出する工場や農場などにおいても広く使用されています。
汚泥脱水機にはさまざまな方式が存在しますが、主にベルトプレス式、遠心分離式、フィルタープレス式、スクリュープレス式に分類されます。
当社の汚泥脱水機はスクリュープレス式の改良進化版と位置づけることができ、どの方式でも欠点となっていた「ろ過部の目詰まり」を機械的に防止するセルフクリーニング機構や、低濃度の汚泥を直接脱水可能とした点などが特長です。
特に「ろ過部の目詰まり」を機械的に防止するセルフクリーニング機構によって、「省エネ性」「維持管理性」が従来方式よりも大きく向上しました。
また、従来方式では実現が困難であった超小型設計を実現したことで、これまで汚泥脱水機を導入する経済的合理性が見いだせなかった規模の自治体でも、脱水機を導入できるようになりました。
例えば、ヨーロッパの人口5,000人以下の規模の自治体では、移動脱水車を手配し、週に一度などの頻度で脱水することが標準となっています。または、処理量過多の従来品をやむを得ず導入し、週に1度ほどの頻度で脱水しています。
しかし、それでは排水処理に戻す脱水ろ液の中に含まれる窒素の量が一度に多く戻ってしまうため、微生物とのバランスが崩れてしまい、維持管理効率が大幅に悪化します。
このような問題を抱える下水処理場を管理する自治体の規模は小さいため、社会的な問題として認識されることはありませんでした。
しかし、ヴァルート™という極小サイズの脱水機の導入で、汚泥を不必要にためたりせず、発生したその場で脱水できるようになり、排水処理維持管理の安定とコスト削減が可能となりました。 超小型機種を製作するメーカーは世界でもまれで、汚泥脱水機ヴァルート™の優位性の一つとなっています。
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まとめ:汚泥濃縮機・汚泥脱水機は処分費用や環境負荷の削減につながる
汚泥は有機汚泥と無機汚泥の2種類です。汚泥の具体例として、下水処理汚泥・産業排水処理汚泥・豚舎糞尿汚泥・食品加工排水処理汚泥・浄化槽汚泥の5つが挙げられます。
汚泥処理の方法には、汚泥の性質や目的に応じて、焼却や埋立、濃縮・脱水などの方法があります。中でも汚泥濃縮機や汚泥脱水機で汚泥を濃縮・脱水すれば、汚泥のかさが減少し、処分費や環境負荷の削減が可能です。
汚泥処理に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。
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