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冷却塔とは?
冷却塔とは、ビル空調などにある冷暖房設備である冷凍機の冷却水を冷却する役割を担っています。冷凍機の冷却水は使用すると温度が上昇するため、温度が上昇した冷却水は一度冷却塔で冷やされて再び冷凍機へと送られています。
どんな管理をすれば良いの?
①レジオネラ症を防止するための水質検査
冷却塔内で冷却する際に発生するエアロゾルによって冷却水中の細菌類が空中に飛散されるので、レジオネラ症防止のための維持管理等が重要になります。
冷却塔の稼働状況に応じてレジオネラ属菌の水質検査を実施しましょう。特に5~9月にかけては、冷却水がレジオネラ属菌増殖の最適温度(36℃前後)に近づくため要注意です。
②冷却水起因の設備トラブルを防止するための水質検査
冷却塔の運転状況によってスケールの生成や腐食を引き起こす可能性があります。
冷却水起因の設備トラブルを防止するために「冷凍空調機器用ガイドライン JRA-GL02:1994 社団法人 日本冷凍空調工業会」を基にした定期的な水質検査を行うことが勧められています。
冷凍空調機器用水質ガイドライン
冷凍空調機器用水質ガイドラインは、基準値項目(全8項目)と参考項目(全7項目)に分かれています。
基準値項目(全8項目)について
項目 | 冷却水系 | 冷水系 | 温水系 | 傾向 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
循環式 | 一過式 | 低位中温系 | 高位中温系 | |||||||||
循環水 | 補給水 | 一過式 | 循環水 (20℃以下) | 補給水 | 循環水 (20~60℃) | 補給水 | 循環水 (60~90℃) | 補給水 | 腐食 | スケール 生成 | ||
基 準 値 項 目 | pH (25.0℃) | 6.5~8.2 | 6.0~8.0 | 6.8~8.0 | 6.8~8.0 | 6.8~8.0 | 7.0~8.0 | 7.0~8.0 | 7.0~8.0 | 7.0~8.0 | ○ | ○ |
電気伝導率 (mS/m) | 80以下 | 30以下 | 40以下 | 40以下 | 30以下 | 30以下 | 30以下 | 30以下 | 30以下 | ○ | ○ | |
塩化物イオン (mgCl–/L) | 200以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | 30以下 | 30以下 | ○ | ||
硫酸イオン (mgSO42-/L) | 200以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | 30以下 | 30以下 | ○ | ||
酸消費量(pH4.8) (mgCaCO3/L) | 100以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | ○ | ||
全硬度 (mgCaCO3/L) | 200以下 | 70以下 | 70以下 | 70以下 | 70以下 | 70以下 | 70以下 | 70以下 | 70以下 | ○ | ||
カルシウム硬度 (mgCaCO3/L) | 150以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | 50以下 | ○ | ||
イオン状シリカ (mgSiO2/L) | 50以下 | 30以下 | 30以下 | 30以下 | 30以下 | 30以下 | 30以下 | 30以下 | 30以下 | ○ |
② 欄内の○印は腐蝕又はスケール生成傾向に関する因子であることを示す。
③ 温度が高い場合(40℃以上)には一般的に腐食性が著しく、特に鉄鋼材料が何の保護被膜もなしに水と
直接触れるようになっている時は防食薬剤の添加、脱気処理など有効な防食対策を施すことが望まし
い。
④ 密閉冷却塔を使用する冷却水系において、閉回路循環水及びその補給水は温水系の、散布水及びその
補給水は循環式冷却水系の、それぞれの水質基準による。
⑤ 供給・補給される源水は、水道水(上水)、工業用水及び地下水とし、純水、中水、軟水処理水などは
除く。
- pH
使用する水に腐食・スケール生成の傾向があるかどうかを知ることができます。冷却塔の構造上、水が濃縮されると、pHは上昇する傾向にありますが、現場環境によってpHが変動する場合もあります。 - 電気伝導率
使用する水に腐食・スケール生成の傾向があるかどうかを知ることができます。電気伝導率が高ければ、それだけ水が汚染されている可能性が高いため、汚染の度合いも知ることができます。 - 塩化物イオン
使用する水に腐食の傾向があるか知ることができます。電気伝導率と相互性もあるため、合わせての確認がおすすめです。水道水には殺菌のために塩素を注入しているため、数十ppm程度含まれています。 - 硫酸イオン
使用する水に腐食の傾向があるか知ることができます。pH、電気伝導率と相互性もあるため、合わせての確認がおすすめです。近くに煙突がある場合、大気中の亜硫酸ガスが混入する可能性があるため、注意が必要です。 - 酸消費量
使用する水にスケール生成の傾向があるか知ることができます。酸消費量が高くなると、スケール生成の他に、藻やスライム発生の可能性も高くなります。 - 全硬度
使用する水にスケール生成の傾向があるか知ることができます。水中に存在するカルシウムイオン、マグネシウムイオンの量を炭酸カルシウム換算した形で表します。スケール生成の傾向を知る、最も重要な分析項目とも言えます。 - カルシウム硬度
使用する水にスケール生成の傾向があるか知ることができます。水中に存在するカルシウムイオンの量を炭酸カルシウム換算した形で表します。カルシウム硬度が高ければ、それだけ炭酸カルシウム主成分のスケールが発生しやすくなります。 - イオン状シリカ
使用する水にスケール生成の傾向があるか知ることができます。イオン状シリカが高ければ、シリカ主成分のスケールが発生しやすくなります。シリカスケールはスケール内でも除去が大変なため、イオン状シリカの値には注意が必要です。
参考項目(全7項目)について
項目 | 冷却水系 | 冷水系 | 温水系 | 傾向 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
循環式 | 一通式 | 低位中温系 | 高位中温系 | |||||||||
循環水 | 補給水 | 一過式 | 循環水 (20℃以下) | 補給水 | 循環水 (20~60℃) | 補給水 | 循環水 (60~90℃) | 補給水 | 腐食 | スケール 生成 | ||
参 考 項 目 | 鉄 (mgFe/L) | 1.0以下 | 0.3以下 | 1.0以下 | 1.0以下 | 0.3以下 | 1.0以下 | 0.3以下 | 1.0以下 | 0.3以下 | ○ | ○ |
銅 (mgCu/L) | 0.3以下 | 0.1以下 | 1.0以下 | 1.0以下 | 0.1以下 | 1.0以下 | 0.1以下 | 1.0以下 | 0.1以下 | ○ | ||
硫化物イオン (mgS2-/L) | 不検出 | 不検出 | 不検出 | 不検出 | 不検出 | 不検出 | 不検出 | 不検出 | 不検出 | ○ | ||
アンモニウムイオン (mgNH4+/L) | 1.0以下 | 0.1以下 | 1.0以下 | 1.0以下 | 0.1以下 | 0.3以下 | 0.1以下 | 0.1以下 | 0.1以下 | ○ | ||
残留塩素 (mgCl/L) | 0.3以下 | 0.3以下 | 0.3以下 | 0.3以下 | 0.3以下 | 0.25以下 | 0.3以下 | 0.1以下 | 0.3以下 | ○ | ||
遊離炭酸 (mgCO2/L) | 4.0以下 | 4.0以下 | 4.0以下 | 4.0以下 | 4.0以下 | 0.4以下 | 4.0以下 | 0.4以下 | 4.0以下 | ○ | ||
安定度指数 | 6.0~7.0 | - | - | - | - | - | - | - | - | ○ | ○ |
② 欄内の○印は腐蝕又はスケール生成傾向に関する因子であることを示す。
③ 温度が高い場合(40℃以上)には一般的に腐食性が著しく、特に鉄鋼材料が何の保護被膜もなしに水と
直接触れるようになっている時は防食薬剤の添加、脱気処理など有効な防食対策を施すことが望まし
い。
④ 密閉冷却塔を使用する冷却水系において、閉回路循環水及びその補給水は温水系の、散布水及びその
補給水は循環式冷却水系の、それぞれの水質基準による。
⑤ 供給・補給される源水は、水道水(上水)、工業用水及び地下水とし、純水、中水、軟水処理水などは
除く。
⑥ 安定度指数は、水の腐食性とスケール生成の傾向を示す尺度として提唱されている。
安定度指数(RS1):6 未満・・・スケール生成傾向,6 以上7 未満・・・安定領域,7 以上・・・腐食傾向
「参考項目」も「基準値項目」と同じく、使用する水に腐食・スケール生成の傾向があるかどうかを判断する基準になります。より詳細な判定が求められる場合や設備の運用上必要な場合に参考項目の検査をするケースがあります。
- 鉄
使用する水に腐食・スケール生成の傾向があるか知ることができます。使用する配管によっては、鉄イオンが溶出し腐食や鉄さび由来のスケールが生成します。また、使用する水の着色の原因にもなります。 - 銅
使用する水に腐食の傾向があるか知ることができます。特に銅管を使用している場合、腐食が進んでいる場合があるため、分析結果には注意が必要です。 - 硫化物イオン
使用する水に腐食の傾向があるか知ることができます。溶存酸素と反応して速やかに硫酸イオンになるため、腐食の原因の一つとされています。 - アンモニウムイオン
使用する水に腐食の傾向があるか知ることができます。アンモニウムイオンが多いと、電気伝導率上昇するため腐食速度が大きくなり、腐食が進みやすくなります。 - 残留塩素
使用する水に腐食の傾向があるか知ることができます。塩素は殺菌のために水道水に注入されています。しかし高濃度で水中に存在すると、金属に対して激しい腐食作用があるため腐食の主な原因とされています。 - 遊離炭酸
使用する水に腐食の傾向があるか知ることができます。水中に存在する遊離炭酸が酸消費量(基準値項目)に対して大きい値を示すと、金属に対する腐食作用が大きくなり、腐食の原因となります。 - 安定度指数
使用する水に腐食・スケール生成の傾向があるか知ることができます。安定度指数が6未満のときスケール生成傾向、6以上7未満のとき安定領域、7以上のとき腐食傾向です。
安定度指数を知るためには、“水温”“カルシウム硬度”“酸消費量”“pH”“蒸発残留物”の値が必要になります。
冷却水の水質検査は、
①冷却塔メーカーの定める保守点検周期
②空調設備の使用ピーク時期
以上のことを考慮して計画的に行いましょう。
トラブルの未然防止のために、定期的な水質検査をお勧めします。
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