汚泥の含水率について詳しく知りたい方必見!この記事では、汚泥脱水機の仕組から含水率を下げるメリットや計算式などを細かく紹介しています。また、環境負荷の低減やコスト削減につながる含水率を下げるテクニックも学べます。
目次
汚泥の含水率とは
汚泥の含水率は、汚泥処理プロセスにおける重要な指標です。
含水率とは、汚泥全体の重量に対する水分の重量の割合を表す数値で、通常パーセンテージで表現されます。
汚泥脱水機の性能を評価する上で、この含水率は非常に重要な要素となります。
汚泥脱水機の仕組み
汚泥脱水機は、下水処理場や各種工場の排水処理施設などで発生する汚泥から水分を除去し、固形分を脱水する装置です。
主な目的は、汚泥の嵩を減らすことで処分費の削減や環境負荷を低減すること、また後続の処理や処分を容易にすることにあります。
- 汚泥の投入:処理対象の汚泥を装置に投入します。
- 凝集剤の添加:必要に応じて凝集剤を添加し、固形分の凝集を促進します。
- 圧搾・ろ過:機械的な力を加えて水分を絞り出します。
- 脱水ケーキの排出:水分が除去された固形分(脱水ケーキ)を排出します。
- ろ液の回収:分離された水分(ろ液)を回収します。
汚泥の含水率を下げるメリット
含水率を下げることには、様々な利点があります。ここでは、主要な3つのメリットについて詳しく解説していきます。
処理コストの削減
汚泥の含水率を下げることで、処理コストを大幅に削減することができます。
これは主に以下の要因によるものです。
- 運搬費の削減:水分が少なくなることで、汚泥の体積と重量が減少し、運搬車両の積載効率が向上します。
- 処分費の低減:多くの処分場では、重量に基づいて料金を設定しているため、含水率が低いほど処分費が安くなります。
含水率を80%から70%に下げるだけで、処理コストが約30%削減されるケースもあります。
環境負荷の低減
含水率を下げることは、環境保護の観点からも非常に重要です。
主な環境負荷低減効果は以下の通りです。
- CO2排出量の削減:運搬車両の走行距離が減少し、燃料消費量とCO2排出量が抑えられます。
- 水質汚濁の防止:脱水効率が高いほど、汚泥からの浸出水が減少し、周辺環境への影響を最小限に抑えられます。
- エネルギーコストの削減:含水率が低い汚泥は、乾燥や焼却などの後処理に必要なエネルギーが少なくて済みます。
再利用・リサイクルの促進
汚泥の含水率を下げることで、再利用やリサイクルの可能性が大きく広がります。
- 肥料化の促進:低含水率の汚泥は、肥料としての品質が向上し、農業利用が容易になります。
- 燃料化の効率向上:バイオマス燃料として利用する際、低含水率の汚泥は燃焼効率が高く、より多くのエネルギーを回収できます。
このように、汚泥の含水率を下げることで、処理コストの削減、環境負荷の低減、再利用・リサイクルの促進という3つの大きなメリットが得られます。
汚泥脱水機の種類と含水率の関係
汚泥脱水機には様々な種類がありますが、それぞれの特性によって得られる含水率が異なります。主要な4種類の汚泥脱水機について、その特徴と含水率の関係を詳しく見ていきましょう。
ベルトプレス型脱水機
ベルトプレス型脱水機は、2枚の連続したベルトの間に汚泥を挟み込んで圧搾する方式の脱水機です。
ベルトプレス型脱水機で得られる含水率は、通常70〜85%程度です。汚泥の種類や運転条件によって多少の変動があります。
- 有機性汚泥:75〜85%
- 無機性汚泥:70〜80%
遠心脱水機
遠心脱水機は、高速回転する遠心力を利用して固液分離を行う脱水機です。
遠心脱水機で得られる含水率は、通常65〜80%程度です。汚泥の性状や遠心力の強さによって変動します。
- 有機性汚泥:70〜80%
- 無機性汚泥:65〜75%
スクリュープレス型脱水機
スクリュープレス型脱水機は、回転するスクリューで汚泥を圧搾しながら脱水する方式の脱水機です。低動力で運転できることが特徴です。
スクリュープレス型脱水機で得られる含水率は、通常70〜85%程度です。汚泥の種類やスクリューの圧搾力によって変動します。
- 有機性汚泥:75〜85%
- 無機性汚泥:70〜80%
多重板型スクリュープレス型脱水機(汚泥脱水機ヴァルートデュオ™、ヴァルート™)
![汚泥脱水機ヴァルートデュオ™](https://www.amcon.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/11/VOLUTE-DUO.png)
2種類のリングが積層したろ体と、その内部をスクリューが貫いた構造となっており、スクリューによる加圧脱水で固液分離を行います。
- 有機性汚泥:75〜85%
- 無機性汚泥:70〜80%
汚泥脱水機ヴァルートデュオ™、ヴァルート™の詳細はこちら
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汚泥の含水率測定方法
汚泥脱水機の性能を評価する上で、含水率は非常に重要な指標です。含水率の測定方法はいくつかありますが、ここでは当社で行っている乾燥法をご紹介します。
乾燥法
- 試料採取:汚泥から約10gの試料を蒸発皿に採取します。
- 乾燥:試料を110°Cで2時間加熱し、乾燥させます。
- 冷却と測定:乾燥後、デシケータ内で30分放冷し、重量を測定します。
- 計算:乾燥前の重量と乾燥後の重量の差から水分量を算出し、含水率を百分率で報告します。
含水率の計算式
含水率は、汚泥全体の重量に対する水分の重量の割合を表します。
含水率(%) = (汚泥中の水分の重量 ÷ 汚泥全体の重量) × 100
この式を使用することで、汚泥中の水分量を百分率で表すことができます。
含水率と固形物濃度の関係
含水率は固形物濃度と密接な関係があります。
固形物濃度(%) = 100 – 含水率(%)
つまり、含水率が低下すれば固形物濃度は上昇し、逆も成り立ちます。
含水率と脱水効率の関係
汚泥脱水機の性能を評価する際、脱水効率という指標も重要です。
脱水効率(%) = (初期含水率 – 脱水後含水率) ÷ 初期含水率 × 100
脱水効率の値が高いほど、脱水機の性能が高いことを示します。
含水率を下げるための汚泥脱水機の選び方
汚泥脱水機を選ぶ際には、含水率を効果的に下げるために、いくつかの重要な要素を考慮する必要があります。
汚泥の性状による選択
汚泥の性状は、脱水機の選択に大きな影響を与えます。汚泥の種類や特性によって、適切な脱水機を選びましょう。
有機性汚泥と無機性汚泥の違い
汚泥は大きく分けて有機性と無機性に分類されます。
有機汚泥は主に下水処理場や食品工場から発生し、無機汚泥は化学工場、メッキや表面処理の工場、発電所、浄水場などで発生します。
ランニングコスト
汚泥脱水機の選択において、初期投資だけでなくランニングコストも重要な要素です。
電力消費量の検討
各脱水機の電力消費量を比較し、長期的な運用コストを計算することが重要です。
遠心脱水機は高速回転を必要とするため、比較的電力消費量が多くなる傾向があります。
一方、ベルトプレス型やスクリュープレス型、多重板型スクリュープレス型脱水機は、比較的低い電力消費で運転できます。
メンテナンス頻度と費用
定期的なメンテナンスにかかる費用や頻度も考慮する必要があります。フィルタープレス型、ベルトプレス型は濾布の交換が必要ですが、スクリュープレス型、多重板型スクリュープレス型脱水機は連続運転が可能で、メンテナンス頻度が比較的低いという特徴があります。
ポリ鉄(ポリ硫酸第二鉄)の併用による含水率低減
ポリ鉄は鉄系無機凝集剤で、生物処理余剰汚泥の脱水に使用する薬品として高分子凝集剤と併用すると、高分子凝集剤のみ使用した場合と比較して、脱水ケーキの含水率が2~3%下がる傾向があります。下記実験では、凝集性が改善し含水率は3.3%低下する結果となりました。これにより廃棄物処理量を1.22t削減することができます。
※すべての汚泥に当てはまるわけではありません。詳しくはお問い合わせください。
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汚泥乾燥機による含水率低減
![汚泥乾燥機SPシリーズ](https://www.amcon.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/11/SP-2-B.png)
汚泥脱水機で脱水したあとに汚泥乾燥機に投入して乾燥汚泥にすることで、含水率を10~40%に下げることができます。
例えば含水率83%の脱水ケーキを含水率10%の乾燥汚泥にすることで、ケーキ重量は588KGから111KGにまで削減できます(固形物量100kg-DSの試算)。
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まとめ
今回の記事では、汚泥脱水機の含水率についてご紹介いたしました。 汚泥脱水機の含水率は、排水処理において非常に重要な指標です。含水率を下げることで、処理コストの削減や環境負荷の低減、リサイクルの促進といったメリットが得られます。ベルトプレス型、遠心脱水機、スクリュープレス型など、様々な種類の脱水機がありますが、汚泥の性状や処理量、設置スペース、ランニングコストを考慮して最適な機種を選ぶことが大切です。
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